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UncleKのSOHO的生活::介護難民 まとめ

介護難民 まとめ

 昨年12月に母が亡くなり、後を追うように父も今年5月に亡くなりました。入所手続きを進めていた特別養護老人ホームは、入所日が確定するところまでは辿りついたのですが、残念ながらその前に本人が力尽きてしまい、結果的に入所まではいたりませんでした。

 どたばた駆けずり回り悪戦苦闘が続く半年でしたが、その中で見えてきた老人介護制度の問題点などを最後にまとめておきます。

■情報不足が一番問題

 母が最初に入院したH市民病院は、国の医療制度では急性期病院という位置付けで、積極的に治療を施して症状を改善する役割を担っています。こういった病院は、一通りの治療が終わって症状が安定期に入ると、患者は直ぐに退院を迫られてしまいます。

 ところが、その後受け入れを担う施設、あるいは病院が、受入れ能力の絶対数が不足していたり、受入れに厳しい前提条件があったりして、専門的な立場からのフォローがないと、患者の側だけの対応では利用が大変難しい状態にあります。一応、身近な自治体にも相談窓口が設けてありますうが、施設のリストや一般的な資料を渡してくれる程度で、個別の問題を解決するにはまったく役立ちません。

 私の場合、以前から在宅でヘルパーさんの派遣やデイケア等をお願いしていたご縁があり、派遣先のケアマネージャーさんに、何度も相談の連絡を取りました。両親とも入院してしまった後は、実質的に契約関係はなくなっていたのですが、それにもかかわらず、最後までいろいろ細かなアドバイスを頂くことができたので、何とか難局を乗り切ることができました。なかなか先が見えずかなり絶望的な気分に陥っていた際も、「最悪短期間だけの条件でしたら、ショートステイで何日か受け入れてくれるところは探せますから」という一言は、ホント心強いものがありました。いざと言うときになって慌てないよう、早めに相談できるところは確保しておいた方が賢明です。

 父も、救急で入院した後、老人保健施設に変わりましたが、このときは本人の状態も母のときとは異なり、病院側も「初めに期限ありき」といった対応ではありませんでした。担当医も病院に所属するケースワーカーさんに相談できるよう配慮してくれたので、かなり楽に次の居場所を探すことができました。

 病床数が多い割りにケースワーカーさんが一人だけで、面談をお願いしても1週間以上待たされるな体制が十分とはとても言えませんが、どうにも困るような立場に立たされた場合には、多少強引にでもケースワーカーと話ができるよう頼み込んだ方が早く解決策が見つかります。病院間の転院なら、病院から直接転院先の病院へ交渉してもらうこともできます。

■老人介護は穴だらけ

 特別養護老人ホームは、一度入所できれば終身でケアが受けられますので、万が一の際にもそれほど対応に困ることはありません。ただ、絶対数が不足しており、本人の状態が介護認定で「要介護5」以上が入所できる最低条件のように言われています。「要介護5」と言えば日常生活に関するあらゆる面で全面的に介助が必要な状態ですが、そんな状態でも1年以上の入所待ちが普通と言われています。父の場合、先のケアマネさんから新規で開所する施設の情報を頂き、そこを狙って申込みを行ったおかげで何とか入所枠に滑り込むことができました。

 在宅介護よりは採算性がよいようで新設するところが増えているようですので、現在お探し中の方はそういった情報を集められるといいかもしれません。新設だと受入れの人数枠が大きいため入所のハードルが既設の施設よりはかなり低くなります。

 老人保健施設は、病院での治療を終えた方が自宅、あるいは他の施設に移られる前にリハビリを行うことを主目的とした施設です。「介護難民 -2-」で取り上げたように、施設の体制によって受け入れてもらえる症状が施設ごとに異なり(症状はさほど変わらなくても、処方の必要な薬の種類で入所できたりできなかったり、といったことも)、よほど覚悟を決めて片っ端からあたるか、きちんとした情報を把握してみえる方の援助がないと、うまく対応する施設と巡り会うことは至難の業です。中には特養と同じように終身でケアしてもらえる施設もありますが、そういったところはやはり同じように1年近く待つことが必要だったりします。

 介護施設では、他にグループホーム等いくつかのタイプがありますが、いずれもそれほど介護の必要性が高くない方が対象です。

 病院の方は、急性期病院での治療を行った後入院が可能になる病院として長期療養型の病床を主に抱える老人病院と呼ばれるところがあります。こちらは、医師や看護師の数が急性期病院とは落差が激しく、自力で食事のできない方は満足に食事が摂れなかったり、認知症があったりするとベッドに縛り付けられたままになってしまったりする可能性もあるようで、家族としては預けることに不安があります。

 今のところ受入れ人数の多いところが多く、緊急避難先としては考慮の対象となるかもしれません。ただ、ここも一箇所に継続して入院できるのは半年ぐらいの期間で、一旦は入院できたにしても、平行して別の入所施設を探す必要があります。また、政府としてはこういった病院も順次少なくしていく方向で考えているようです。代りに病気治療と介護を組み合わせた新たなタイプの施設を立ち上げる計画があるようですが、民間任せですので直ぐに十分な受け入れ先が確保できそうにはありません。一方的に老人病院の削減を先行して進めるようだと、文字通りどこにも行き場のない「介護難民」が数多く出てきそうです。

■日本の介護費用は本当に莫大か?

 ちょうど今日厚生労働省から「06年度の医療費の総額が32兆円」という発表があったと報道されていました。金額だけみると「そんなに巨額の費用がかかっているのか」と思いますが、実際のところ対GDP比で言うと、日本の医療費は先進諸国の中で20位近くをウロウロしている状態です。

 社会保障や福祉に関わる予算全体でみても、予算規模自体が巨額で先進諸国の中では福祉にかける予算が少ないと言われる米国でも30%前後を支出しています。逸れに対して、日本はそれよりもかなり少ない20%程度。日本政府の社会保障や福祉に対する消極的な姿勢は、先進諸国の中ではかなり際立ったものだと言えます。

 政府は「老人介護は原則自己責任」を基本政策として掲げています。確かに少子高齢化で年金を基礎とした老後保障もおぼつかない状態。ヤミクモに老人の医療費や介護の費用が膨らんでいい訳はありませんが、現在でも、介護の負担に耐えかねて親を手にかけたり、逆に介護する側が自ら命を断ったりする悲惨なケースがたびたび報道されています。やがて時を経れば、その役割が、現在ワーキングプア、ネットカフェ難民等と呼ばれている世代に引き継がれることになります。そうしたときのことを想像するとき、うすら寒い気持ちに襲われるのは私一人ではないと思います。

 先に悪質な法令違反で話題を呼んだコムスンにしても、正当に業務を行っている業者が逆に経営が成り立たないほど劣悪な介護報酬の設定がその背景にはあります。

 日本の貯蓄率の高さは以前からたびたび採り上げられてきました。経済が長期に低迷した時期を経てある程度変わってはきたようですが、それでもなお際立つ貯蓄率の高さも、その背景に心細い老後保障が影響しているのは間違いないでしょう。それはまた、「いざなぎ超え」と言われながら景気拡大にイマイチ弾みがつかない遠因ともなっています。

 現在は当事者のみが問題を抱え込んでいる状態ですが、このまま放置すれば、それほど遠くない将来、深刻な社会問題となることは目に見えています。厳しい財政状況はあるにしても、もう少し先の見通せるきちんとした解決策を検討するよう、機会あるごとに国へ制度の見直しを働きかけていく必要があると思います。


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