アメリカのサブプライム・ローンの破たんをきっかけに世界経済が混乱しているようで、株価やドルの下落(日本の立場から言えば円高でしょうか)、逆に石油をはじめとする資源の高騰などが毎日マスコミに採り上げられ、昨日も「東京円:円高進む 3年1カ月ぶり1ドル=102円台 (毎日jp 08年3月3日)」などという見出しがでかでかと各メディアを賑わせていました。日本経済への影響は割に楽観的に捉えたものからかなり悲観的なものまで専門家の評価も分かれていて、日頃金融資産などとはとんと縁遠い私などには、どちらが正しいのかさっぱり分かりませんが、株価の値動きは当のアメリカさんを差し置いてほとんど日本株ひとり負けみたいな状態で、少なくとも世界の投資家の間では、あまり先の見通しが明るくないと判断されているようです。
「戦後最長の景気拡大」とか言われながら、さっぱり賃金は上がらず上がったのは税金や医療費の自己負担ぐらい。いつまで待っても個人消費が上向かず景気の方もちゃんとした回復軌道に乗らないっていうんで、「収入が増えなきゃ誰もお金は使わない」という至極当たり前のことにようやく国も気づいたようで、多少経済政策の方向を修正、経済界に働きかけて、今年の春闘あたり、賃上げや非正規雇用の待遇改善へと向かいそうな流れだったんですが、サブプライム・ローン破たんをきっかけに世界経済の雲行きが怪しくなったことで、こちらの方もどの程度見直しが進むか怪しくなってきました。
毎度大騒ぎされる円高にしても、輸出企業には逆風かもしれませんが、同じく経済を圧迫する要因の石油や小麦などの高騰を緩和したり、若い女の子たちの好きなブランド品が安く買えたり、悪いことばかりではないはずですが、一方通行のように株安に向かってしまうのは、国内経済が極端な輸出偏重といういびつな形になっていることが災いしていることは間違いありません。ここは多少無理をしてでも、いままで稼いだ分を従業員の側に還元して欲しいものです。
ただ、それに合わせて、というか、それ以前に見直して欲しい点があります。
アメリカさんより一足先にバブルの崩壊を経験し、そこから抜け出す際、経営建て直しを目指して日本企業全体にリストラの嵐が吹き荒れたわけですが、とりわけ大手メーカー各社の業績が振るわない中、中小の下請け企業はメーカーの経営を下支えしるために、かなり無理なコストダウンを強いられました。ところがいざバブル後遺症から抜け出して大手メーカーが軒並み「最高益」に沸く中で、こういった中小下請け企業はほとんどその恩恵を受けられないまま今日まできました。
勝ち組企業の代表格のトヨタ自動車、「乾いた雑きんを絞る」という言葉がトヨタ式経営の極意として採り上げられますが、実際に中心になって「雑きんを絞っている」のは、むしろこういった下請企業だったりします。(特にターゲットにして批判しているわけではありませんので、変な例で採り上げてトヨタさん、ごめんなさい)
今、その弊害はかなりヤバいラインに来ているのではないでしょうか。製造業等の下請けを担う町工場などは押し並べて高齢化が進み後継者不足が深刻になってきているようで、経済が持ち直した後も、それほど状況が好転せず、大手メーカーが採用増に動いているあおりを受けて、むしろ人材難が進んでいるようです。
技術力を誇示するメーカーにしても、実のところこういった下請企業の存在なしには経営が成り立たないことを考えると、もうかった恩恵を自社の社員に還元することは当然として、せめて適正な水準まで下請企業への経費も引き上げる方向で考えていかないと、自分の足を食べて食いつないでいるタコのようなもので、そのうち大きなしっぺ返しとなってわが身に跳ね返ってくるような気がします。
うちでやっているようなパソコン作業(うちでは、デジタル世界のアナログ作業と呼んでいますが)も同じように、というかそれ以上に価格の下落にさらされています。(ようやく本論につながりましたねェ。やれやれ・・・)
特に印刷などの付随作業のような形で扱われるケースの多いデータ入力などは、下請け作業的な色彩が強く元請け企業からすると経費を削る対象の第一候補のような業務。「誰でもできる作業」といった捉え方をされている面もあり(クライアントさんの要求水準を考えるとけっしてそうではないのですが)、価格の競争は厳しく、請ける側も実際に作業を担うのが家庭の中で仕事をする女性が中心ということもあって極端に安い金額で受注する企業も多く、よけいに下落に拍車をかけています。
在宅の仕事としては敷居が低く作業者の担い手のすそ野は広いように考えられていましたが、それも最近では風向きが変わってきて「データ入力は作業が厳しい割にお金にならない」といった話がネット上で広がり、志望者の数が減ると同時に、一旦仕事を始めた方も長続きしないなど、どこもスタッフの確保や作業の水準を保つのに苦労しているようです。
スタッフが安定しないと、当然技術レベルも下がってきますので、クライアントの求めるレベルを維持するためには、作業後のチェック体制を手厚くする必要があり、その部分の経費を確保するためますます支払う作業単価を下げざるを得ないという悪循環にハマっています。
よく提携の提案を頂く中国企業などは、だだっ広いスペースで数多くのオペレーターが席を並べて作業しているような、自宅の一室に所狭しとパソコンやプリンター、スキャナーなどを詰め込んだうちの環境とは比べられないような環境で、そんなところから提携うんぬんなどというお話が持ち込まれると恐縮しちゃうぐらいですが、では、実際、単価的なことは抜きにしてもうちで請けた入力作業をそういった企業に依頼できるかとなると、細かな確認やらくるくる変わる日程などを考えても電話連絡もおぼつかない遠方の企業を相手に依頼することは難しいと思います。
ある程度中国等に回る仕事はあっても、細かい部分の対応力の点で競い負ける心配はしていませんが、今のままの状態では作業を受けるスタッフがいなくなってしまうのではないか、という懸念は真剣に心配しています。
うちの作業量はさておき(あまり、さておかれても、困りますが・・)、やはり日本経済が先細りにならないためにも、最低限、仕事の内容に見合ったコストは確保し合えるような体制を考えていく必要はあるように思いますが、いかがなもんでしょうか。
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